*7/12ウォータートン〜カルガリー(晴れ)*
今日はウォータートンレイク国立公園の滞在最終日である。朝、8:30に起床しシャワーを浴びた。浴室あった鏡で自分をみると、もの凄い日焼けをしていたことに気づいた。既に皮までむけはじめている。その後荷物の整理に取り掛かる。3日も滞在すると、バックパックの周辺は様々な荷物で散らかりっぱなし状態であった。ベッドにぶら下げておいた衣類やタオルをスタッフザックの中にしまい、その後バックパックの中に強引に押し込んで荷物の整理は無事終了した。荷物の整理が終わると、なんだかとても「ホッ」とした感じになってくるのがわかる。後は担いでいけばいいだけなので、かなり心理的に楽になってくるからだ。ついでに昨日オージーの青年から言われたカギの件を思い出し、部屋の中をあちこちと探したがカギはどこにもでてこなかった。キッチンへ行き、ウォータートンでの最後の朝食をとることにした。キッチンでは、ニュージャージーのおばさんが出発の準備で出たり入ったりしているの見えた。
「出発ですか。」
と俺が尋ねると、
「そう、これからグレイシャーに向かうのよ。」
と答え、しばらく話をすることになった。おばさん一昨日の息子さんをクリプトレイクに一緒に同行するのをキャンセルした件について再び謝ってきた。俺としては別に気にしてなかった。むしろ言葉の通じない人に頼むのもかなり不安要素があるとおもってたので、
「大丈夫です。気にすることありませんよ。」
というと、そのおばさんは自分の息子のことを急に愚痴りだしてきた。
「うちの息子はだめ息子で…。はっきりしないし、今も出発の準備をしてるけど、私が指示しないと何も動かないし…。はあ(ため息)」
「心配することはありません。息子さんはまだまだ若いです。これからいろんなことを経験して、りっぱな紳士になりますよ。」
と言おうと思ったけど、どう英語で表現したらいいのかわからず、結局、
「いえいえ、だめ息子ではないですよ。」
としか言えなかった…。おばさんは愚痴を終えると、再び出発の準備に取り掛かるためキッチンを後にすることにした。その時冷蔵庫に入ってた飲み掛けのオレンジジュースが余ってたのを俺にくれてよこした。俺も遠慮なくもらい、そのオレンジジュースをペットボトルに移し変え冷凍庫に入れて凍らすことにした。
「じゃあ、気をつけて。機会があったら日本も訪れて見てください。」というと、
「あなたも気をつけて旅してね。」
といっておばさん親子と別れることとなった。
朝食は食パンにピザソースをぬって、スライスチーズをはさんだ簡単なもので済ました。昼過ぎにカールさんが迎えにくるから、時間的にはまだまだ余裕がある。
10:00を過ぎたので一旦レセプションセンターへ行ってチェックアウト手続きを済ませてきた。カールさんが来るまでまだ2時間以上あるので木陰のところにあるテーブルで旅の日記と友人へ出す絵葉書を書いて時間を潰すことにした。
12:30頃、ようやくカールさんの車がレセプションセンターにやってきた。オンボロビューイックに乗り込み、再びピンチャークリークへ向かう。車の中でこのウォータートンでの過ごした事の報告を行った。カールさんお奨めの「ベアーズハンプ」と「キャメロン滝」にいった事も伝えると、彼も満足そうにしてくれた。小高い丘の上にあるプリンス・オブ・ウエールズ。ホテルに近づくと、カールさんが、「君はここのホテルにはいったのか?」
と聞いてきたので、
「いえ、行きませんでしたけど…。」
と答えると、車をホテルの玄関の前に走らせ、
「じゅあ、5分時間上げるから、行っておいで。ここまで来たんだから、ホテルの中を覗いてみるだけでも価値があるよ。あと、ホテルをでた湖の景色も素晴らしいから。」
といってくるではないか。
「わかりました。じゃあ、ちょっくら見てきます。」
といって俺は彼の車から降りて、ホテルの中に入っていった。ホテルの中は中央部分が吹き抜けとなっていて、とても天井が高く感じられる。今度は外にでると、湖を一望出来なかなか素晴らしい光景だ。時間があまりないので適当に写真を取って、彼の車に足早に戻っていった。

ここが、プリンス・オブ・ウエールズ・ホテルのある丘の上からみた景色。でも個人的にはベアーズハンプから見下ろした方がきれいだな...
国立公園のゲートをでると、再び草原地帯の退屈な光景が続いてきた。来る時は気がつかなかったが、道路沿いは牧場が多く、沢山の牛がいるのがわかった。そんな光景が続いてくるとカールさんが
「日本には牛はいるのか?」
と聞いてくるので
「ええ、日本にも沢山牛はいますよ。」と答えた。風力発電のでかいプロペラが見えてくると、
「日本にもああいった、風力発電」
「あります。そんなにメジャーじゃないけど…」
と風景を見ながら都度適当な会話をしてた。
1時間位してようやくピンチャークリークに到着した。なんだかこの町はウォータートンに比べると、とても暑い…。気温はおそらく30℃は超えていたと思う。バスの到着時間は14:30なので、まだまだ1時間以上もある。外で待つのは暑くてたまらんから、冷房の聞いたディーポの中で待つことにした。冷たいものが飲みたかったので中をよく見渡してみると、古い家庭用の冷蔵庫の扉に紙が張られていて「COKE 1$」と書かれているのを見つけた。どうもこの冷蔵庫が自動販売機の替わりになっているらしい。おもむろに冷蔵庫の扉をあけると、ダンボールの箱に詰められた缶コーラが無造作に入っていた。そこから、1本取り出し、カールさんの所へ持っていき金を払おうとすると、彼は手を振りながら
「ただでいいよ。」
といってくれた。お礼をいって、冷たいコーラを一気のみしてしまった。マジで外は暑いのだ。タバコを吸う時だけ外にでて、それ以外はディーポの中で涼むという行為を繰り返してバスが来るのをまった。暇でしょうがないから、ディーポの中を観察してみると、最初にここに到着したときは気づかなかったのだが、質屋であることがわかった。自転車に乗ってきた、先住民系の青年がCDラジカセを質に入れてる様子をみてわかったのだ。彼はラジカセのほかにCDも質に入れようとしていたが、店員に「CDなんかいらないわよ。」
と怒鳴られてた。しかし彼は凹むことなく一生懸命CDも質に入れようと懸命であった。CDもよく見てみると、一枚一枚きちんとケースに入っているのではなく、別のホルダー形式に収めているものであった。幾らなんでもこれでは売れないだろうと俺は思った。暇だからそんな店員と彼のやりとりをずっと眺めてしまった。
しばらくすると、カールさんが、
「もうそろそろバスが来るから、乗車の手続きをしたらどうだ。」
といってきたので、カウンターへ行きカナダパスを店員に提示をした。すると店員はわざわざ、カルガリー行きのチケットを発行してきたので、
「ん?カナダパスは提示をして、チケットを発行してもらうのか?」
と考えてしまった。見せるだけでよいのかと思っていたけど、ディーポによってはいろんなシステムがあるんだなと感じてしまった。これから、この「カナダパス」を利用して旅をされる方は、なるべくなら一度チケットカウンターでパスの提示をした方がいいと思います。大抵はドライバーに提示して済みますが、中には提示をした後、チケットを発行する所もありますので…。
カウンターのおばちゃんはチケットを発行しながら気さくに話し掛けてくる。俺が日本人だとわかると、なんだか妙に嬉しそうな感じであった。理由を尋ねてみると、
息子さんが札幌の大学に通ってるとの事であった。俺が、
「おー、ホッカイドー、ホッカイドー。」
というと、ますます嬉しそうに笑っていた。ちなみに俺が住んでる神奈川の地名を行ったら、知らないと言われてしまった。カナダに来ていろんな人から、日本のどこに住んでるのかと聞かれたが今のところ神奈川県を知ってる人は誰も居なかった。横浜を知ってる人は一名ほどいが…。
バスがやって来る、14:30の時間が迫ってきたので、ディーポの外で待つことにした。外はこれからバスに乗ろうとする乗客が4〜5名程待っている状態である。その中で、一組のカップルがこれからどちらかが旅立っていく為、別れを惜しむように、抱き合いながらキスをしてる連中がいやがる。目の前でこういった光景をみてると段々、むかついてきてしまうのである。(理由はエッセイ「一人旅のむなしさ」に掲載)。なるべく見ないように違う方向を向いてはいるのだが「チュ、チュ、チュ」と音まで聞こえてくるからたまったものではない。こんなことを書いてると、「B−Yはただひがんでるだけ」と思われそうだが、そう、ひがんでるのである。他人のいちゃつきを見せ付けられるほど嫌なものはないのだ。彼らのそばにいるとだんだんむかついてくるので、再びディーポ内で待つことにした。
バスは結局30分以上遅れてやってきた。バスの車内は結構込んでて、後ろの方しか席が空いてなかったのでそこに座ることにした。グレハンの後部座席はあまりお勧めは出来ない。なぜならば、結構ガラの悪い人たちが座ってることが多いのである。今回は若いバックパッカー風の青年が座っていたが、長旅の退屈でストレスがたまってるせいか、ものすごく行儀が悪い。バスの座席に備え付けられている音楽を聞くためのヘッドホンを乱暴に引っこ抜き、そのへんに叩きつけてるではないか。長時間の狭いバスの中に閉じ込められて、気が狂いそうな気持ちになるのはわからないでもないが、はたからみてるとちょっと近寄りがたい雰囲気を彼らは漂わせている。あまりそのような光景をじっと見るのもあれなんで、俺は外の景色を眺めることにした。

バスの車窓から見えた景色。ほんとに平らな景色がひらすら続く。日本でみるのどかな田園風景とはまた違う。ただ、ため息がでるばかりである。
外は何もない緑の平原がひたすら続くのみ。ときどき緑の中に菜の花畑が混じってると
その菜の花の黄色が景色にとても新鮮なイメージを与えてくれるのだ。なんの変哲もない景色であるが俺にとっては、その何もなさがとても新鮮で、ただ「ぼー」っと眺めてるだけでも全然退屈がしない。今回の旅の目的にこの「何もない大平原をみる」というのがあったのだ。理由はなんだっただろう?特にこれといった理由はなかったのだが、ただ「大平原をみてみたい」という気持ちがあったのだけは確かだ。飛行機ではこういった風景はみることは出来ないが、バスであれば十分に堪能することができる。そんな景色をみながら、ふと何か物足りないことに気づいた。そうBGMである。バッグの中から徐にMDをとりだし、ウォークマンの中にセットした。聞いてる曲は「エンヤ」。何故かこういった景色にエンヤの曲は妙味合っていて聞いててとても心地がいい。

たま〜にある建物にひときわ新鮮さがあります。こういった景色にはカントリーのBGMも合うと思う。 バスはやがて、フォートマクマレーに到着し20分停車した後、レスブリッジに到着した。ピンチャークリークで乗ったバスはレスブリッジ行きではあるが、このバスはそのまま自動的にカルガリー行きに切り替わり乗り換えることなく、そのままの乗車で済んだ。そしてバスは再び大平原の中を走りながらカルガリーへ向かっていった。
夜の20:30頃、バスはようやくカルガリーに到着をした。夜といっても、まだまだ太陽が空にあるので、夕方といった方が正解かもしれない。バスから降りると、「むあッ」とした熱気がきて暑い。近くにあった温度計をみると32℃を表示している。
「なんでこんなに暑いんだ」
と思いながら、すぐさまディーポ内に入った。ディーポ内は冷房が効いてとても涼しい。カルガリーという大都市であるため、ディーポはとてつもなくでかい。待合室にはちょうどスタンピートフェスティバルを行ってるせいか、カイボーイハットをかぶった人たちが沢山いるのがわかる。それに日本人も結構いるではないか。ディーポ内を歩いてると、
「え〜、マジですか?」
という日本語が聞こえてきたので、ふとその聞こえてきた方向をみてみると、黒人の青年と日本人の若者が会話をしてるのが見えた。よくみてみると黒人の方が日本語をペラペラとしゃべってるのがわかる。この青年はしきりに、「マジっすか?」「マジ〜。」と連発をしている。日本人がこの言葉を使ってると全然違和感を感じないのであるが、外人が使うとなんだかとても違和感を感じてしまい、思わず笑いたくなってしまった。でもここまで日本語を使いこなせるのであればとても立派だと感心してしまった。まずは、チケットカウンターへ行きサスカトゥーン行きのチケットを発行してもらうとカナダパスをスタッフに提示した。しかしここではピンチャークリークの時みたいにチケットの発行はなく、そのスタッフは
「サスカトゥーン行きは23:00。ゲートナンバーは4だよ。後はそのパスをドライバーに提示してくれ。」
といわれた。
「ゲートナンバーは4。23:00発ですね。このパスをドライバーに提示するのですね。」
と俺は復唱するようにスタッフに再度確認した。スタッフは黙ってうなずいた。今回に始まったわけではないが、俺はバスを利用する時は必ず、ゲートナンバーと出発時間は確認するようにしている。特にゲートナンバーは重要だ。大きなバスディーポだと沢山のゲートがあるからだ。言葉のあまり通用しない海外では、こういった確認は重要であると自分なりに判断してるからである。間違って違うのに乗ってしまったらしゃれにならないと思ってるからだ。次のバスに乗るまで3時間もあるから、まずは身を軽くしたいので、あのクソ重いフレームザックをコインロッカーに預けることにした。ディーポの中にはコインロッカーがあり、しかも今回俺が背負ってるようなバカでかいスペースのものまである。料金は4ドル。荷物をコインロッカーに入れたあと、腹が減ってきたので、飯を食うことにした。ディーポ内に食堂があったが、時間が遅いので、調理の方はやっておらず、甘いドーナツやマフィン、それとサンドイッチ位しかない。仕方がないのでサンドイッチとプラスチックのケースに入ったシーザーサラダを食べることにした。サンドイッチはまあまあ食べれたが、サラダはめちゃめちゃ不味かった。なんだかひからびたレタスやセロリにとてつもなく臭い粉チーズが入ってて、口に入れるたびに「おえっ」くるような感じである。でも結局がまんして全部食い終えた。食後にタバコを吸おうとまたクソ暑い外にでることにした。21:00を過ぎても、外はまだまだ明るい。日没はだいたい22:00位であった。ディーポの中にはゲームセンターもあったので、暇だからピンボールで遊ぶことにした。日本ではやってたゲームもあったが、未だにパックマンがあったのには驚いてしまった。それと有料のインターネットのPCが2台置いてあった。2ドルで30分間見ることができる。日本にいる友達にメールを打とうと思ったがこのPCには日本語のソフトが入ってないので、英語で打つしかないことに気づいた…。(MSNのHOTMAILであれば日本語のメールは見ることは可能.。この有料のPCはカナダのあちらこちらにおいてあったが、場所によっては日本語が文字化けしたりするのもあり)とりあえず、自分が今カルガリーにいてこれからサスカトゥーンに向かうという主旨の文を英語で打つことにした。
出発の40分くらいになってから、ぼちぼち4番ゲート前に人が集まり始めたので俺も並ぶことにした。やはり早めにならんで、前の方の座席を確保したいからだ。前の方であればドライバーと近いので安全上安心できる。それにバスのフロントガラスから景色を堪能できるからだ。後ろの方は今までの経験上ガラの悪い人たちが座ってることが多い。ゲート前にドライバーが立つといよいよ乗車手続きの開始だ。パスを見せて行き先を告げるだけ。ドライバーはパスにかかれているナンバーをメモに記載すれば、あとは乗るだけだ。ゲートをくぐって、車内に持ち込まない荷物は、バスのラゲージの前において置けばよい。あとはスタッフが乱暴にラゲージスペースに放り込んでくれる。バスに乗り込みめでたく最前列の席を確保することができた。乗客の混み具合もひどくはなかったので、2列分しっかり確保ができた。
23:00定刻通りにバスはカルガリーを出発した。街の中を走ってる際、スタンピートフェスティバルの会場の横を通り過ぎた。窓からはカウボーイハットをかぶった人たちが、ビールを飲みながら踊ってる光景が写ってた。
23:00を過ぎるともう外は真っ暗闇である。景色も楽しめないので、ただ寝るしかなかった…。
(つづく)
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