一人旅のむなしさ...。

 一人旅をしてると、時にはむなしいこともあります。今日はそんな思いを書いてみたいと思います。かなり個人的にひがみがはいってますそんな訳で女々しく且つ少々乱暴な言葉も含まれてますが我慢して聞いてください。

 

 一人旅をしててむなしくなる時、それは何といっても周りがカップルだらけのときだ。旅の道中での「カップル」これは一人旅をする俺にとってむしろ天敵といってもいい位だ。普段の街中で見かけるカップル達はそんなにむなしさもわかないが、旅先で見かけるカップルを見ると無性にむなしくなる。これは何故だろうか?答えは簡単ただ単に羨ましいからである。一人で強がって旅に出ているが心の中では「俺も彼女がいれば一緒に旅したい」といつも思ってた。でもこれだけでは今回のエッセイを終わりにしては面白くないので、もっと深く考察して行こう。

 旅先のカップルはなんといっても愛のテンションが高い。見るからにして「ラブラブ」なのである。「私達ラブラブ〜。今日はダーリンと一緒の楽しい旅行きゃっきゃっ」というラブラブオーラが強烈過ぎる。俺も「ちっ!旅は一人で行くもんだぜ。おめえら悔しかったら一人で旅してみろゴルァ!」という全く自分勝手な孤高のオーラを発してるが、彼らのラブラブオーラには無力になってしまうのである。むしろ孤高のオーラが吸い取られるといってもいい。吸い取られたら最後後は無力感だけが残り、むなしくなってしまうのである。やはり愛は何者にも強し!。個の力は1+1=3以上という相乗効果が現れる愛のパワーの前にひれ伏せざる得ないのである。

 かつて、このラブラブオーラに完膚なきまで叩きのめされたことがある。そうあれは確か4年前のG.W.に津軽半島へバイクで旅したときだ。この旅は「夕日と温泉」というコンセプトで出かけたのだが最初の2日間は雨、3日目の午後からようやく晴れて、夕方頃に竜飛岬に到着。「今日こそ日本海に沈む夕日が見れる」と気合をいれて日没40分くらい誰もいない場所をようやく見つけ、バイクの位置とカメラのセッティングを終了させた。せっかくここまで来たのでカメラにどうしても収めたかったのだ。日没まで時間があるので缶コーヒーとタバコでしばし黄昏ていると、段々車の数が増えてきた。「やばいカップルだ」と思ったら次から次へと車が続々到着。みんな夕日を見に集まってきている。「ロマンチックな所にカップルあり」ということで仕方の無いことであるが。幸いカメラのファインダーにはカップルの車が入らなかったので安心したが。ふと周りの車の中はみんなラブラブムード。「いいなー」と思ったら最後、すでに孤高のオーラが吸い取られてるのである。「うーん、いかん、いかん。夕日をカメラにおさめねば」と自分に言い聞かせ、何枚か写真をとりはじめた、すると「すいませ〜ん、写真撮ってください」と一組のカップルが...。「いいですよ。夕日をバックですね。車は入れますか?はいチーズ」これを皮切りに何組のカップルが俺の所にシャッターを頼みにやってくる。一組二組ならいいが5組以上もやってくるとさすがにうんざりしてくる。心の中でうんざりしながらも表面上は「はい、いいですよ。車はどうしますか?あっ入れないんですね。となると私のバイクが邪魔ですねちょっととかしましょう」ともう専属カメラマンじゃないんだから、勘弁してくれ状態、また自分の心境と裏腹にカップルに愛想をふりまいてる自分も悲しい。しかもカメラを取り終えるとカップル達はさっさと車の中へ、少しでもロマンチックな気分に浸りたいんだろう。普通カメラをとってあげたりするとお互いに「じゃ、撮りましょうか」っていうのが普通なんだが...。まあ、こっちは三脚とセルフタイマーがあるので一人でもとれるので、問題はないが。しばらく静かになったのでまた、一人でシャターを押してたら、今度はカップルが車から出てきて、俺のバイクの後ろでラブラブムードに...。「ったく、どけよ!てめえら、車の中にひっこんでろ」とこっちは写真をとってんだよ。もう怒りが込み上げてくる。そんな怒りのオーラを感じとったらそそくさと車の中に戻っていって一安心。でも次から次へと同じことが...。

 せっかく一番最初にきて、場所取りをしたと思ったら、次から次へと侵略されてる感じです。夕日が日本海に沈む頃はラブラブオーラも絶好調。目のやりばに困るくらい。押しつぶされそうです。まるでナイアガラ瀑布に一人で流れを帰そうとしたら、いとも簡単に流されてしまう状況です。ここは諦めて退散ということで、バイクをちょっはなれたところまで押していった。その場でエンジンをふかしたらラブラブムードの人たちに申し訳なくちょっとした心遣いであった、そんな気を使えば使うほど自分は惨めになりつつあった。「何しに日本海の夕日を求めて旅にでたんだろう」そんな思いが募ってきた。カップルのシャッターを押すために...。場所が悪かったのか。そう思わざるを得ない。何よりも「夕日をみてたそがれる」という楽しみはもろくも崩された。これが現実なのか?一人とはこんなに肩身が狭いものなのか?もっと精神的に強くなるべきか?いろいろと自問自答が始まった。

 日も暮れてきたのでキャンプ場に向かうべくお土産屋でビールを購入したとき、一組のファミリーが声をかけてくれた「お兄さん一本どう?バイクだと寒いでしょ」と一本の玉こんにゃくを頂いた。先ほどの夕日のポイントで写真をとってあげたファミリーだった。「ありがとうございます」といい、5分位会話をした後、お互い旅の安全を願って分かれた。ラブラブオーラでボロボロになった心にこのファミリーがくれた一本の玉こんはとても美味く感じられた。とても心が暖まる思いであり、この旅での一番の思いである。人とのふれあい、いつも旅に出ているがこれが一番の思い出に残る。たとえ一期一会であっても、一生忘れることのできない思い出になることであろう。

 ラブラブオーラに対抗できるのは、自分も彼女を作って、自ら発するしかないそれしかないのである。