夜景

 いつもは、自然の景色を眺めることで心の癒しを行ってきたが、唯一人工的な景色で好きなものがある。それが夜景だ。黒いキャンバスに、建物の照明や車のライトが描き出すようなこの光景は芸術に値するといってもいいくらいだ。

 
 夜景にはまっていったのは、確か予備校生の時であった。遊びが制約されてしまうこの時期、時々ストレスで心が病んでくる、そんな時ふと、予備校の窓から見えた新宿の超高層ビル郡の姿が妙にきになり「あそこの最上階から見える景色はどんなものだろう」とふと思い、帰り際、友達を誘って行って見たのだ。展望ロビーから見る景色は、「おおーすげぇー...」と言葉を発した後、ただ溜息がでるだけだった。建物の照明やネオンが宝石のように散りばめられ、近くにある代々木公園や新宿御苑はブラックホールのようにぽっかりと黒くみえ、道沿いに動く車のライトは、血管の中を流れて行く血液のような感じがし、まさに街そのものが一種の生命体のように感じてしまった。そんな光景にはまってしまった私は何か嫌なことがあると、ここへ時々足を運び夜景をみて「明日も頑張ろう」と自分にいいきかせるようになった。


 しかし、ある事を境に私はこのビルへは足を運ぶことをやめてしまった。そう、ここはラブラブオーラ(詳しくは「一人旅のむなしさ」を参照)の巣窟だったのである。