7/18ホワイトホース2日目 |
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*7/18ホワイトホース2日目(マイルス・キャニオン・ハイキング)(晴れ)* 昨晩はぐっすり寝ることが出来た。起きたら朝の8:00位であった。早速キッチンに行って、朝食作りに取り掛かった。今日の朝食は目玉焼き、マッシュポテト、食パンにピザソースをぬったメニューにした。宿のオーナーがタイミング良く、皆にモーニングコーヒーを配ってた。昨日知り合ったY君からも鶏がらスープで煮込んだ野菜スープも頂く事もできた。キッチンのテーブルは既に満杯なのでデッキにでて、すがすがしい朝を感じながら野外での朝食を楽しむことにした。朝食を済ませた後、今日の行動予定をどうするか考えることにした。デッキでタバコを吸いながら観光案内所でもらったハイキングマップをペラペラとめくりながらどうするか迷っていた。するとデッキに一人の日本人の女性が俺に話し掛けてきた。 「カヌーをしにきたんですか?」 ここホワイトホースはまさにカヌーツーリングのメッカだ。世界各国からカヌーツーリングを楽しむ為に訪れる人が沢山来ている。年間約2〜3000人がここからユーコン川を下り、その内日本人は2〜300人程挑戦してるそうだ。年間といってもほとんどが6月〜8月の期間限定である。あの野田知佑氏もユーコン川を下る為によく訪れてる場所である。街中にはレンタルカヌー屋さんが何件か存在している。 「カヌーね。やってみたいんだけど。今まで一度もやったことがないから。今回はパスかな。」と俺は答えた。話し掛けてきた彼女はSさんといって。ワーキングホリデーのビザでカナダにきたそうだ。あちこち旅をしながら、2002年の1月にここホワイトホースにきて、この宿で住み込みで働いてる女性であった。英語を取得するためにカナダに来たそうだ。彼女はとても熱心で、傍らにはいつもコンパクトサイズの和英英和辞典を置き、自分のわからない単語がでてくるとすかさずチェックをしてた。俺から見ると彼女の英語力はなかなかのものではあるのだが、本人はまだ納得しておらず「もっと頑張んないと...」とこぼしてた。7ヶ月もここに住んでれば、どこかお薦めのハイキングコースを知ってるだろうと思って、彼女に尋ねてみた。するとマイルス。キャニオン・トレイルかグレイ山がいいと教えてくれた。でもグレイ山はふもとまで自転車でいかないと時間的にきついとも教えてくれたので、ユーコン川沿いを歩く、マイルス・キャニオンに行こうと即決をした。マイルス・キャニオンであれば観光案内所からもらって来た地図を持ってるからバッチリだ。目的が決まれば後は、行動に移すだけだ。俺はさっさと昼飯用のサンドイッチを作ることにした。具はマッシュポテトにピザソースを混ぜて、Y君が勝手に使っていいよといってたキャベツの葉を2〜3枚もらって、それをパンにはさんだ。サランラップがなかったのでサンドイッチはキッチンにあったアルミホイルを巻いておいた。 準備が整ったので12:00頃宿をでた。途中近くのコンビニでスポーツドリンクを購入して、歩き始めた。まずは、ダウンタウンの南のはずれにある、ロバート・キャンベルブリッジを渡り、すぐさま川沿いのハイキングコースに入った。川沿いを歩いてるとルアーで釣りをやってる人達がちらほらと居た。しかし、つれてる気配はない。1時間もあるくと腹が減ってきたので、川沿いでさっき作ったサンドイッチを食べることにした。「我ながら、美味いな〜。」と一人で満足し、食後は一服しながら休憩をとった。川では、犬が二匹ほど川に飛び込んで水浴びをして遊んでる光景がみえた。こんな北の地でも日中は日差しが強くとても暑い。犬も暑くてたまらず、水浴びをしてるのだろう。川沿いの木々の中のコースを1時間ほど歩くと、最初のスポットである水力発電のダムに着いた。ダムが出来る前は、ホワイトホース・ラピッズといわれた激流の場所であったところだ。ゴールドラッシュの頃、ユーコン川を筏などで下ってた人達はここでいったん船や荷物を陸揚げして、ホワイトホースの街から再出発していたらしい。ダムから放流される水はすさまじく、ものすごい轟音を立てていた。 ![]() ダムサイトの脇に事務所のような建物があったので、中に入ってみた。ダムサイトの脇にはフィッシュウェイという段々状になった、魚の通り道がある。事務所の壁にはちょうどそのフィッシュウェイの様子を眺めることができる窓ガラスが設置されていた。覗いてみると魚が居る気配がなく、単なる水槽のようであった。 ![]() ![]() 係員がいたので、なんの魚か尋ねてみると。「チヌークサーモン」という魚であった。事務所の階段を上るとダムを一望できた。そして脇にはフィッシュウェイも見下ろすことができる。なんだか魚のいけすみたいな感じであった。 一通り見を終えた後、先を急ぐことにした。コースは今までほとんど平坦だったのが、一気に急な坂道を登ることになった。坂道というよりちょっとした崖であった。そこをジグザグにスイッチバックをしながら、一気に登りつめた。途中近道らしき、コースもあったが、砂場で傾斜もきつく足場も悪かったため、途中で引き返すことにした。近道をして滑り落ちてケガをするより、素直にコースを辿るしかない。急がばまわれはまさにこのことである。丘の上は、平坦な感じになっていた。そこからは湖が見渡す事のできるすばらしい場所であった。 ![]() ![]() ![]() また歩き始めると、道は崖になっていた。ふと耳をすませると、下の方でガサガサと音が聞こえてきた。「まさか、クマか?」とは思ったが、その音は杞憂に終わった。散歩連れに来てた犬であった。でも、こういった森の中では、クマというのに非常に敏感になってしまう。何か音がすると、すぐさまそちらの方を向き音の招待がなんであるか確かめたくなってしまうのだ。迂回路はあったが、あまり時間をロスしたくないので、崖の雑草に掴りながらなんとか下ることができた。しばらく湖沿いをずっと歩き続けた。途中、テーブルチェアのある休憩場所があったので小休止をすることにした。すぐそばでは、足にギブスをはめた青年が枝を湖に放り投げて、黒いラブラドールレトリバーに取りに行かせてた。犬はとても利口で、飼い主が枝を放り投げると、同時に湖に飛び込みすぐさま枝を口にくわえて飼い主のところに運んできてた。何度も同じ事をやってると犬も段々飽きてきたのか、取りに行くことをやめてしまった。飼い主は盛んにどなりちなして、 「行け!行け!取って来い!」と煽ってたが、無駄であった。俺も飽きてきたので、再び出発をした。 地図をみると、近くにいくつかの湖が隣接されてるのがわかったので、気分転換も兼ねて、Hidden Lakeという所に寄ってみることにした。ハイキングコースを左にそれるとChadburn Lake Roadという未舗装路にぶつかり、そこを横断してしばらくあるくとその湖はあった。湖というよりか野池と言った感じの大きさである。 ![]() Hidden Lakeは結局写真だけ撮って、また引き返すことにした。湖沿いをまた、ずっと歩いた。時々、飛行機の音が聞こえてくる。この湖には胴体の下に大きなフロートをつけた水上飛行機の発着場所がいくつかあるからだ。 ![]() トイレのある、Day Use Areaという休憩ポイントに到着をした。ここにはボートスロープも完備されている。若者達が水浴びをしたり、日光浴してる姿が目立った。ここで30分位、大休止を取る事にした。なんだか歩き続けてとても疲れてしまったからだ。天気がいいため日差しが強く、とても暑い。だが風が吹くととても涼しく気持ちがいい。俺もなんだか湖に飛び込みたくなる心境に駆られたが、止めた。携行食にもってきてたm&m'sチョコをバリバリと食った。日本でも一時期売られていたチョコだ。(最近は見かけなくなった)そのときの売り文句は「お口の中で溶けて手にとけない」であったが、ウエストバッグの中に放り込んだままであったので他の荷物とぶつかり、コーティングされた表面はボロボロに砕けてたので、手で溶けてしまった。疲れたときにはやはり甘いものが必要なので、袋ごと口に持っていきチョコを放り込んだ。 休憩を取ったのでだいぶ疲れが回復してきたので、マイルス・キャニオンへ向かう為歩き始めた。地図をみると後30〜40分位の距離と記載されていた。「後もう少しだ。」 するとはるか前方から犬が俺の方にめがけて全速力で走ってくるのが見えた。 「ん?犬か。どれどれ頭でもなでてやるか。」 と思っていたら、どうも様子が変だ。歓迎してるというより、俺に対して敵意を剥き出しにしてる感じであった。案の定俺のそばに近づくや否や、猛烈な勢いで吼え始めてきやがった。敵意を剥き出しにしてるから、頭なんかなでてやれる状態ではないので、無視して歩き始めると、犬は適度な間合いを取りながら、俺にまとわりついて吼えまくってくる。正直俺もいつかまれるかわからないので、ちょっと怖くなってきた。その辺にある棒っきれでも探して、ひっぱたいて追い払おうとしたら、遠くからその犬の飼い主らしき女性が犬につなげるロープを持ってきて、叫びながらやってきた。飼い主は犬を落ち着かせる為に、まず俺にそのまま動かずじっとしてくれといった。どうも俺のデイパックに付けてる、ベアベルの音に犬は反応してるようであった。確かに俺がじっと物音を立てないと、落ち着きを取り戻すが、ちょっとでも何かの拍子で「カラン」とベアベルの音を立てると、すぐさま「ウ〜ッ」と唸り始める。飼い主がようやく犬の首輪にロープをつけると、一言謝って、犬と一緒にその場をさっていった。クマを寄せ付けない為につけたベアベルは犬を寄せ付けてしまった。 森の中に入ると、ハイキングコースはいくつも枝分かれするようになっていた。ここのハイキングコースは冬場はクロスカントリーコースとして使われている。俺はなるべく湖沿いをあるくことを心がけた。その方が迷わずにマイルス・キャニオンへ行けると考えたからだ。遠くから人の声と「パン!パン!」と手の叩く音が聞こえてきた。その声と音は段々近くなり、やがて人影も見えてきた。家族連れのハイカーで、「ヘイ!」「アーッ」などと、突発的に声を発してる。頭がおかしい人なのかなと思ったが、それはクマ除けの為にわざと大きな声を発し、手を叩きながら歩いているのが理解できた。そんな光景をみてたら、ちょっと怖くなってしまった。彼らとはすれ違いに挨拶をかわし、そのまま歩き続けた。 1時間位してようやくマイルスキャニオンに到着をした。ここの場所は川の両側がほぼ垂直に切り立ってる崖にはさまれてる。川幅も砂時計のちょうどくびれた部分のように細くなっている場所だ。 ![]() ![]() ここは別にハイキングコースを歩かなくても車で行くことができる。ダウンタウンから南へでるとロバート・サービス・ウエィにでて途中左折をすれば、Schwatka Lake沿いを走ることができるマイルス・キャニオン・ロード(アラスカハイウェイまで繋がってる)があるので、そこを走っていけば駐車場が完備されてるのだ。容易に車で行くこともできるから、他の見物客も何人か居た。MTBを持ってきて周辺のコースを走ってる人もいる。 時間は、もう18:00近くであった。まともに歩いて帰ったら22:00を過ぎてしまう距離だ。幸いここは日没の時間がとても遅いので22:00をなっても。暗闇の中を歩く心配はない。ただ、もう疲れ果てて歩く気力がなくなってしまったのだ。 「ヒッチハイクして帰ろう...」 すぐさまこの考えが浮かんだ。ヒッチハイクは過去海外で2回ほどやったことがあるので、そんなに心配ではなかった。車がきたら親指を立てればいい、ただそれだけの事だ。帰路はそのため、ハイキングコースを歩かず、車が走ってるマイルス・キャニオン・ロードをとぼとぼと歩いていった。 ![]() しかし、何なんだこの道路は。肝心な車が全然走ってない...。一人ぽつんと、道を歩くのはなんだかとても心細い気持ちが湧いてくる。たまに後ろから車の音が聞こえてくると振り向き親指を立てた。しかし、乗せてはくれず車は冷たく俺のそばを通り過ぎていった。ヒッチハイクは2〜3台位乗せてくれないからといってめげてはだめだ。ひたすら根気強く頑張るしかない。途中でビューポイントの場所に出くわしたので、休憩を取る事にした。 ![]() ビューポイントに付くと一台のキャンピングカーが止まってた。ちょうど、夕食を作ってるらしく、ステーキを焼いてる、香ばしい肉の香りが俺の空腹に更に拍車をかけてきた。あまりにも腹が減ってきたので、携行食に持ってきた、チョコレートをその場で全部食べてしまった。それでも当然腹は満たされないので、水をガバガバと飲み干してしまった。ここで休憩をしても、ステーキの匂いで余計に腹が減るだけなので、ダウンタウンを目指して歩いていくことにした。 ![]() 湖沿いをとぼとぼと歩いて行ったのだが、車は一向に来ない...。1時間に3〜4台位しか走ってないのだ。ヒッチハイクをはじめてから5台目でようやく車が停まってくれた。助手席から口や鼻にビアスをしたいかにも格好が「パンク野郎」といった感じの男性が話し掛けてきた。 「どこまで行きたいの?」 「ダウンタウンまでなんだけど、乗せてもらえます?」 「おー、ちょうどいい。俺達もダウンタウンに行くんだ。後ろに乗ってくれよ。」 と助手席に座ってた男性は後部座席にある、散らかってたものを慌てて片付けてくれた。見た目は怖そうだったけど、車に乗せてもらったら、そんな印象はすぐに吹っ飛んでしまった。 「ありがとう。マイルス・キャニオンまで歩いて来たんだけど。すっげー疲れてね。」 「どの位歩いたの?」 「6時間以上かな?」 「そいつはすげーな。ところで俺ジェイムスっていうんだ。よろしく。」 と彼は握手を求めてきた。 「B-Yです。今カナダを一ヶ月かけて旅してます。こちらこそ宜しく。」 運転手はジェイムス君の彼女らしい人が黙々と運転をしていた。彼女も口や鼻にピアスをしまくりであった。格好は黒の皮ジャンを着てて、彼と同じように「パンク野郎」といった感じであった。 「どこから来たの?」 「ん?日本からだよ。」 「何?日本人?これ見てくれよ、刺青彫ったんだ。」 というと彼はTシャツを「ぐわっと」脱いで、左胸に彫られていた刺青を俺に見せてくれた。その刺青は日本語で「リアーナ」と書かれていた。 「おー、リアーナ。すげーよ。」 「すごいだろ。イェーイ!」 「イェーイ!」俺もつられて叫んでしまった。グレハンのバスで一緒だったカイル君といい、今カナダでは日本語で刺青をするのがはやってるのだろうか? 「ドーソンシティには行かないのか?」 「行きたいんだけど、時間がなくてね。今回はあきらめることにしたよ。」 「残念だな。明日から3日間ミュージックフェスティバルがあるんだ。全国からそれをみるために若者が沢山集まって来るんだよ。」 正直行ってみたい気がしたけど、諦める事にした。 しばらく走ってたら、運転手の彼女が道を間違えた。左折するところをまっすぐ走ってしまい行き止まりになってしまったのだ。するとジェイムス君が 「お〜、悪いな。道を間違えたよ。彼女は狂ってるからな。危なくてしょうがない。」 そんな発言に彼女は思いっきりむっとした表情になった。ここで痴話げんかでもされたらたまったものではないので、 「いやいや、そんな事はない。落ち着いて行きましょう。落ち着いて。」となだめた。 彼女もニコっと笑って、正気を取り戻してくれて安心した。 この後ずっと彼らとの会話は盛り上がり、何故か必ず最後に「イェーイ!」と叫んだ。雰囲気的にどうしてもそうなってしまったのだ。結局ダウンタウンには20分位で到着をした。ダウンタウンの真ん中で下ろしてもらって、乗せてくれた二人と固い握手を交わして、そのまま別れた。 宿に戻る際に途中酒屋に寄って、ビールを買いに行った。ハイキングで汗を流した後には、やっぱりビールが飲みたくなってくる。店のカウンターでバドワイザーを4本注文したが6本以上でないと売らないというので、仕方なしに6本購入することにした。 宿に戻って、速攻でビールを一本飲んだ。ハイキング後のビールは格別に美味い。その後シャワーを浴びて、晩飯を作った。晩飯は即席ラーメンとビール。デッキにでて、外の景色を見ながらのんびりと食った。ほろ酔い気分になりながら、食後に散歩がてら、ユーコン川を見に出かけた。宿から歩いてすぐなのがありがたい。川沿いのベンチに座ってウォークマンでエンヤの曲を聴きながら、ひたすら「ぼーっ」っとたそがれまくった。 ![]() 夕日に染まるグレイマウンテン、ゆったりと流れるユーコン川。青い空が段々とオレンジ色にそまっていき、その時間の流れを肌で感じながら、何もせずじっくりと見届けた。何ともいえぬ至福なひと時だ。こうやって、音楽を聴きながら過ごす時間はとても贅沢な感じだ。 1時間くらい経ってから、ライブハウスへ向かった。その店は1stアベニューとウッドストリートにぶつかった角地にある「Back Water」という名前であった。宿のオーナーが、カントリーかブルース系ならここだと教えてくれた店だ。看板にカナディアンカヌーが飾られてる。店の中に入ると、早速音楽が聞こえてきた。二人のミュージシャンがアコースティックギターを弾きながら元気よく歌いまくってる姿がみえた。店内は結構混んでいたが、適当に開いてる席を見つけて座ることにした。あたりをぐるりと見渡すと、砂金取りの道具が壁にあちらこちら飾られており、ゴールドラッシュ時代を再現させるような雰囲気であった。ライブは結構盛り上がっていて、若い男女がステージの前で音楽に合わせながら一生懸命踊ってる姿があった。しばらく席に座ってたのだが、店員がオーダーを取りに来ないので、仕方なしにカウンターへ行って注文をしに行くことにした。カウンター内の店員はカントリー歌手のドリー・パートンに似たおばちゃんが肩がぐわっと見える洋服を着て一人忙しそうに切り盛りをしていた。俺がバドワイザーを頼むと、おばちゃんは怒った口調で、 「今忙しいから席に座ってて、後で注文をとりにいくから。」 と怒鳴られてしまった。忙しいのはわかるが、何もそんな怒らなくてもいいだろうと思い、俺もそんな態度にむかついたので、 「わかったよ。くそばばあ。」と日本語で捨てゼリフを吐いて席に戻った。それでも待てどもさっぱりオーダーが来ない。ライブも一旦休憩に入り、何だか手持ち無沙汰になり、暇で仕方がない。おばちゃんが暇そうになるタイミングを見計らって、もう一度カウンター出向き注文を取りにいった。今度はおばちゃんもむっとせず、ビールをすぐに出してきた。再びライブも始まったので、ビールを飲みながら音楽を楽しんだ。しかし、知ってる曲はほとんどなく、かろうじてジェファーソン・エアプレーン、ドアーズ、レッド・ツェペリンの曲だけわかった。ビールを飲み終えると、おばちゃんがようやく注文を取りに、各テーブルを周りはじめた。俺の所にもやってきて、 「同じ物でいいの?」といってきたが、ビールは宿で2本も飲んでたので飽きてしまい、ジム・ビームをジンジャーエールで割ったものできるかと尋ねたら、出来るというのでそれをを頼むことにした。 ふと。なんだか視線を感じるものがあったので、その方向を見てみるとヘベレケに酔っ払った青年が俺の事をじろじろとみてるではないか。この青年、俺が店に入った当初からいて、足元がおぼつかないくらい酔っ払ってた奴だ。ステージにも勝手に上がり、ミュージシャンからギターを取り上げて歌まで歌ってた。ギターのテクはなかなかであったが、何故か途中でチューニングがあってないといって演奏をやめてしまってた。そんな行為を行ってたので、俺もあまりかかわりを持たないよう、気をつけていたのだが。何だか向こうから目をつけられてしまった。酔っ払いにはからまれたくないなと思っていたが、何かの拍子で思いっきり奴と目があってしまった。俺もその頃は酔っ払ってきた状態だったので、奴に対して「ニヤリ」と笑ってしまった。すると彼は今そこへ行くから待ってろといった感じで俺の方を指差してきた。奴は俺のテーブルにつくと、人差し指を俺の方に向けて、 「お前何者だ!」と尋ねてきた。 「B-Yだ。日本から来た。」 「何しにホワイトホースへ来たんだ?」 「ん、観光だよ。どころで君の名は?」 「ダグラスだ。フィルム会社に勤めている。ところでお前は俺の事を殺しに来たのか?」 全く何を突然言い出すのかと困り果ててしまった。酔っ払いだからしょうがないかと思い、適当に相手をすることにした。 「はあ?何で俺が君を殺さなくてはならないのか?」 「お前が店に入ってきたとき、すごい形相で来たからな。」 といって奴は俺が店に入ってきたときの様子を見せてくれた。どうも俺はその時、思いっきり目が据わっていて、眉間にしわまで寄せてたそうだ。まるで、相手にガンを飛ばすような感じだ。そんな目つきの悪い、殺気だったわけのわからん東洋人が来たので彼もビビッテ俺の存在が気になってたとの事であった。全くとんだ誤解であった。店に入った時はなんだか薄暗かったので、そんな目つきになってしまったのだ。奴はその後ゲームをやろうと言い出し、自分の目を良く見て同じように目玉を回転させろと言い出した。なんだか意味がよくわからないので、適当にやってたら、 「遅い!まじめにやれ!」と怒られてしまった。酔っ払いを相手にするととても疲れてしまう。今度はいきなり日本語で 「ナニ、イッテンダ!」と叫び始めた。 どこでその日本語を覚えたのかと尋ねたら、奴の上司が日本人でよくこの言葉を使ってるそうだ。どんな意味なのかと尋ねられたので、 「I don't understand what you say.」と英語で訳してあげた。その後彼も酔いが引いてきた感じになってきたので、音楽の話などをしてやり過ごした。ようやく奴が冷静さを取り戻すと、急に握手を求めてきて、 「君とは友達だ。」と言ってきた。俺もつられてがっちりと固い握手を交わした。そして彼は自分の指にはめていた指輪を俺に渡し、俺にくれてよこした。断っても頑として受け付けず、 「君にやるよ。友達だ。俺はこれから、街をこのスケボーで転がしてくる。カナダを楽しんでいってくれ。」といい、再び握手を交わして店を出て行った。何だかよくわからん奴ではあったが、終わってみれば面白い奴であった。 再び一人になり、ライブを楽しんだ。ジムビームのジンジャーエール割をお替りした。店は2:00で閉店になり、追いやられた。外にでると、空はまだうっすらと明るくて驚いてしまった。なんだか朝帰りでもするような感じだ。ちなみにホワイトホースの7月の日照時間は19時間である。太陽が沈んでもまだ、明るさは失われないのだ。 宿に着くと、物音を立てないように、そーっと中にはいった。みんなぐっすりと眠ってるので起こさないように気をつけた。自分のベッドにねると、アルコールの勢いもあり即効で爆睡に入った。今日一日はいろんな事があり面白い日であった。 (つづく...) |
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