*7/9ウォータートンレイク国立公園(1日目)*
さてさて、宿の確保ができると何故かほっとしてしまうのだ。きままな一人旅もいいものではあるが、やはり宿を予め予約してないと、どうしても不安に駆られてしまうのである。その土地に着いた時にまず最初の仕事は宿の確保だ。今回の旅では国立公園を何箇所か周る予定だったので、キャンプ道具も持参してきたが、キャンプは、あくまでも最終手段と考えていたので多少なりとも心に余裕はあったが、一抹の不安は隠せない。特にサマーシーズンの国立公園はとても混んでる。観光国カナダとしてはこれほど稼ぎ時のシーズンはない。しかも世界中から観光客が押し寄せ、陸続きである隣のアメリカなら車で来ることも出来てしまう。現に昨日泊まったモーテルの駐車場にもアメリカナンバーをちらほら見かけてしまった。
とりあえず、チェックインの時間まで4時間以上あるので、まずは国立公園内の街をぶらっと歩いてみることにした。先ほどカールさんに、車で一通り案内はされたが、やはり自分の足で歩いて確かめるのが一番である。しかし、30分位歩くと急に腹が減ってきてしまった。時計をみるともう昼の12時を過ぎている。街の散策を止め、どこで飯を食うかの散策に切り替えた。レストラン関係が多いWaterton.avを歩きながら何を食べるか迷いながら歩き続けた。
「オープンデッキでビールでも飲みながら、ハンバーガーもいいな。パスタは今食べ気がしないからパス」など等、いろいろと思いを馳せながら、その通りを2往復もしてしまった。結局決めたのが中華料理屋。俺にとっては一番の無難路線だ。他にもピザ、バーガー等いろんな店があるけれど、中華だとご飯もあるし、たとえメニューが英語でもなんとか料理の想像がつくのではと思ったからだ。早速「New Frank's Restaurant」という店に入った。昼時ではあったが客の入りは8割位で待たずに、テーブルへ案内された。スタッフは全てチャイナ系。おばちゃんのウェイトレスがメニューを持ってきてくれたので、何を食うかいろいろと考え込んでしまう。「Deep
Fry…」とか書かれてるので、なんだかよくわからん。結局「Fried Rice…」と書かれたメニューが目に付いたのでチャーハンと思いそれとビールを頼むことにした。オーダー後真っ先にビールが来た。カナダと言えども、外は結構暑い。そんな訳で、冷たいビールはとても美味く感じてしまった。やがて注文した「牛肉チャーハン」が目の前に運ばれて来た。楕円形の皿の上に「これでもか!」という位のチャーハンが盛られているのである。

(ここが特盛状態チャーハンの店。中華の他に西洋料理もやっている、何だか店のロゴがウエスタン風である)
「なんじゃこりゃ?」と心の中で思ったが、注文したからには食べないとと思い、ガツガツと食べ始めた。味の方はまあまあいける。しかし、食べても食べてもなかなか特盛状態のチャーハンはなかなか減ってくれない。その内だんだんと飽きてきたので、醤油とコショーをふりかけて食べてしまった。何とか全部食べ終え、喉が渇いたのでビールをもう一本注文してしまった。でも、特盛チャーハンを食った後なのでおなか一杯でビールが飲めない状態となってしまった。
「うぇ〜、くっ苦しい〜」と思いながら、時間をかけてビールを飲み終えて、会計を済ませた。会計中にほとんどしゃべれない中国語を使ってみようと思い、
「謝謝」といったら、店員が、
「どっから来たの?」と声をかけて来た。
「日本からです」というと
「中国語話せるんだ」というので、親指と人差し指の間隔をちょっとだけ空けた仕草しながら、
「ほんの少しだけ…」と答えると、向こうが笑いながら、
「ドーモー(どうも)」と日本語で話し掛けてきた。俺も笑いながら、
「再見」と言って店をでた。なんだかこういったやり取りが面白く感じたので、また別の店でもやってみようと思った。
中華料理の店を出たが、やっぱり食いすぎなのでとても苦しかったから、店の前にあるベンチに座って、休憩をすることにした。食後の一服としてタバコをふかしながら、これからの行動を考える。
「まずは観光案内所に行って、この国立公園内の地図や資料を集めよう。」
過去の経験から言って真っ先にこの行動が思い浮かぶ。観光案内所はなんといっても情報源が豊富である。(まあ、「地球の歩き方」とかに載ってる場所であれば大方それで間に合う事もできるが)しかし、国立公園内はまた別である。特にハイキングやキャンプを行う場合は必ず寄った方がいいと思う。最新のトレイル情報や場合によっては禁止になってるトレイルもある。クマとかの出没情報も教えてくれるからだ。簡易的なハイキングマップなどもここで入手もできる。

(観光案内所に行く途中で撮った。湖と山の写真。若干曇ってきたので涼しい)

(ちょっと角度を替えての写真。この辺は湖の北の方でアッパーウォータートンと呼ばれてる)
30分位して、ようやく食いすぎ状態から治ってきたので歩いて観光案内所に向かうことにした。途中コンビニみたいな所でミネラルウォーターを買いテクテクと歩いていった。観光案内所はタウンサイトのはずれにある小高い丘の上に位置している。なので坂道をひいこらいいながら歩き続けるしかない。坂の途中で振り返ってみると、見晴らしがいいせいか景色がとてもきれいで感動してしまう。食後の運動をかねて、なんとか観光案内所に到着した。
(ここが観光案内所。ハイキングをする際は、必ず寄って情報を仕入れるのが大事。更に山奥とかに入る際もここで、許可を貰うのが規則となっている)
入り口から中に入って、すぐに右側にカウンターがあり。パークレンジャーが、これから、ウォータートンレイク国立公園内でバックカントリーを行おうとしているハイカー達に地図を広げて、様々な説明を行っていた。俺もいろいろと聞いてみたい事が沢山あったが、いかんせんそこまでの語学力が無い…。質問できたとしても、相手の返答を理解するヒアリングの力がないので。
案内所の中は意外と狭く、フロアーの真ん中に公園内の地形をとった地図みたいなのが「でーん」と置いてある。絵葉書とかのお土産も多少おいてある程度だ。パンフ類も意外と少ない。まずは地図を探す、適当に「VISITOR GUIDE」とか書かれてるパンフを2種類ほど頂くこととした。奥の壁には公園内の地図が貼ってあり、様々なトレイルコースの名前と難易度、距離、注意点が書かれてるものを見つけて眺めることにした。大小様々なハイキングコースがあるので、どれにしていいか迷ってしまう感じである。とりあえず簡易的な地図を入手したので、今回の目的はそれで達成したことにしてしまった。正直ここでの4日間の予定はほとんど考えてなかった。せいぜい、湖のボートに乗って、適当にハイキングをしてとそんな感じでしたか決めてなかった。
「まあいい。また明日も来よう」
と思い、観光案内所を後にした。外に出てベンチに座りながら、案内所でもらってきた地図を広げてみた。距離とかを見てみると、半日で行けるコースはそんなに無いことがわかった。とりあえず、街の散策もまだ終わってないので、その辺も兼ねて「Town site Trail」のコースを歩いてみることにした。その名の通り街をぐるっと一周するコースだ。LevelはEasy、所要時間は約1時間と書かれている。
「よし!これだ!」
と早速今来た道を戻り、トボトボと歩いていった。

(観光案内所からの帰り道での1ショット。景色がよかったので撮ってみました)
しばらく歩くと「Cameron Falls」という場所に出くわした。狭い岩の間から「ごー」っと音を立てて、凄い水量を吐き出している。更に近くまで歩いていくと、霧状の水しぶきが飛んできて、とても涼しいのがいい。カナダに来て思ったのだが、日中は結構暑い。日差しがとても強く感じる。風が吹いたり、太陽が雲に隠れたりするととたんに涼しくなるのではあるが。しばらくここで涼しさを満喫しながら、写真をとったりして、しばしの休憩を取ることにした。休憩後、滝の上の方にいける道があったので、そこにも行ってみることにした。上から見る滝もなかなか迫力があって凄い。でも、すぐに飽きてしまったので、再度下まで戻ることにした。

(Cameron Fall。水量が結構あるので音も迫力があります。周辺は滝の飛沫がまって、涼しい)
下まで降りようとしたとき、急に目の前に鹿が草を食べているのを発見。そーっと近づくが、物音ですぐに鹿は逃げていく、ただある程度の距離は保っているようだ。もう一度近づいてみて写真を撮ることに成功し、その場を離れることにした。遠くの道路にも、また別の鹿が親子連れで道路を横切ろうとしているのが見える。鹿の他にもリスも多いのがわかる。平気でその辺の道路に所かまわず走り回ってる。四足で走り立ち止まると二本足でたって、首を左右に振りながらキョロキョロと周りを見る仕草がとてもかわいい。

(おッ!鹿がいる。でも近づこうとすると、逃げるんだな...)

(よし!間近で撮れた!おい鹿!こっち向け(笑)。...向くわけないか。)
「Cameron Falls」を後にして、歩き続けるとキャンプ場に出くわした。あらゆるキャンピングカーが連なっている光景はちょっと驚きを感じる。中には観光バスかと思うくらいのでかいキャンピングカーまで止まっているではないか。車用のキャンプサイトは一区画ごとに仕切られていて、バッテリを供給できる柱まで立っている。ちなみにTown Site内にあるキャンプ場の料金はC$15〜23となっています。(シャワー、水、電源有り)オープン期間は5月〜10月まで。
キャンプ場内の草地もこれまたリスが多い、地面をよく見るとリスの巣となっている穴があちこち見かける、俺が歩くと「さっ」っと穴の中に逃げまくる。そしてしばらくすると穴の中からでてきて、「チッチッチッ」っと泣き声をあげるのだ。リスの鳴き声はなんとなく鳥の鳴き声に似ている感じがする。

(リスの巣穴。キャンプ場のあちこちに、点在している。「出て来いゴルァ!」と足でガンガンと地面を蹴るような事は致しませんでした...(笑))やりたくなる心境はあったが...。
キャンプ場をグルっと一周すると湖のほとりに出くわした。周辺はルアーで釣りをする人たちが多い。でも釣ってる人達はほとんど見かけなかった。後はずーっと湖沿いをひたすら歩いていき街へ戻ることとした。そうこうしているうちに16:00を過ぎてきたので、ユースにチェックインをするためレセプションセンターに戻ることにした。

(湖のほとりの写真、周辺はルアーの釣り人が何人か居た)
「B−Yです。チェックインお願いします」
というと、
「はい、これがカギね。ルームナンバーは1だから。ベッドは4番を使ってね。」
と受付の姉ちゃんがカギを俺に渡しながら教えてくれた。
「あと、すいません。俺の荷物は?」
というと
「はい、ここよ」
といって、荷物を置いてあるドアを開けてくれた。
その荷物を担ぐ際、あまりにも重いから俺が
「よいしょ!」
というと、スタッフにくすくすと笑われてしまった。でもマジにこの荷物は重い。片手でひょいと持ち上げることが出来なくらいである。担ぐ時はいつも、大きく足を開いて、中腰の体制に持っていき、一旦ザックを自分の太ももの上においてそこから、ショルダーストラップに腕を通して方に持っていかなければならないのである。こんな荷物では何泊も背負ってバックカントリーの中を歩くなんてとても不可能だなと、ふと考えてしまった。重い荷物を背負いながらヨロヨロと今度はユースのフロントに向かっていった。

(ここが今回泊まったWaterton International Hostel。一泊税込みでC$28だったと思う。なかなか綺麗なユースであった。プール、ジム、コインランドリー、キッチンも付いている)
ユースは先ほどのレセプションセンターからすぐの距離、歩いて2〜3分なので、とても助かった。再度フロントでユースのキーを見せながら、
「B−Yです。チェックインをお願いします。」
というと、
「うちにはプールとアスレチックジムがあります。ユース宿泊者は無料ですので。タオルの貸し出しも無料ですから、ご利用の際はこちらに来てください」
というではないか。
「何?ただ?いいねー」
と思ったけど、考えてみれば水着は持ってきてないし、カナダにきてアスレチックジムを利用するなんてほとんどないなとちょっとしらけてしまった。
「後、23:00以降はそこのドアはカギをロックして入れなくなるから、それ以降は裏からの出入り口を利用してね。」
と教えてくれた。
ここのユースはジム、プールの他に、キッチン、ラウンジ、コインランドリーもあり設備はなかなか充実している。中も結構綺麗である。部屋に入ると、二段ベッドが2つある。一部屋四人用である。今のところ誰もいないので、今日はこの部屋貸切状態かな?とふと期待してしまった。自分の寝るベッドナンバー4を探すと、ベッドの上段側なので、ちょっとがっかり。出来れば下段の方がいいのだが、(寝相が悪いので、もし落ちたらという心配があったため)仕方なくあきらめることにした。荷物を部屋の隅に置き、近くのスーパーに4日分の食料を買出しに出かけることにした。あんまり外食ばかりだと金が続かなくなるおそれがあるので、キッチンの設備があるから極力それを利用としようと思ったからだ。
スーパーはユースからすぐの距離であった。取りあえず、食パン、ピザソース(パンに塗るため)、即席ラーメン、ヨーグルト、野菜ジュース、パスタ(スープスパゲティみたいなインスタント食品)、チーズを購入。調味料関係が塩コショーと砂糖だけを日本から持ってきてたが、こっちで調味料を調達すると、日本のような一回使い切りタイプというのが全くないので。なるだけインスタント系で済ませるようにした。
部屋に戻ると、後から来た宿泊者がいた。とりあえず、挨拶がてらに
「ハイ!」
というと、向こうも
「ハイ!どっからきたんだ?」と尋ねてくるから、
「日本から。君は?」
と問い返すと、そのガタイのしっかりした青年は、
「おー、日本か。コニチワ、コニチワ。」
と陽気に話し掛けてくるので、俺も日本語で
「こんにちは」
と答えてあげた。このガタイのしっかりした青年はオーストラリアから男女3:3の六名でやってきたという。何故か彼との会話はそこで途切れてしまい、部屋には重苦しい雰囲気が漂ってしまった。やっぱり会話はテンポよく切り出さないとだめなのかな?と考えてしまった。過去3回程海外に行ったことがあるので、こういった経験は何度かしている。次に何をしゃべろうか?英語で話そうとすると、どう英語でしゃべったらいいかわからなくなる時が多々ある。そうすると、言葉が出なくなり、相手も「こいつは英語が全くしゃべれないのか。」と判断され相手にされなくなってしまうのだ。勿論その逆もある。たまに調子がいいと、文法を無視して適当に単語を並べるだけであっても何故かコミュニケーションが成り立っていく。相手も面白半分に相手をしてるせいもあると思うけど、そこそこ会話として盛り上がる傾向が多い。要は、テンポよく相手との会話に反応が出来ることである。経験上、頭の中ではわかっているのではあるが、どうしても会話をする時、頭の中で日本語から英語に切り替えていこうとしていくから、言葉に詰ってしまうからである。
なんだか、沈黙な重苦しい部屋の雰囲気に耐え切れず、先程スーパーで買ってきた食材を冷蔵庫に保管しようと思い、その部屋をそそくさと俺は出て行ってしまった。キッチンに行くと、バックパッカーらしき集団がワイワイガヤガヤと楽しそうに料理を作ってる。しばらくキッチンは使えそうもないなと思い、とりあえず冷蔵庫に食材を袋ごとぶちこんで、ラウンジのソファーでくつろぐことにした。ラウンジにはテレビ、雑誌、ガイドブック等が置いてあるが、当然のことながら全て英語である。雑誌を読んでも英語だからさらに疲れると思い止めて、テレビを見ることにした。適当にチャンネルをまわすと、メジャーリーグがやってる番組を見つけた、よく見てみるとちょうどメジャーリーグのオールスター戦を行ってる所で、選手の紹介が始まっていた。しばらくみるとイチローが参加してるのをみて、なんだか思わず嬉しくなってしまった。
20分くらい経っても、まだキッチンは占領されて使えそうもない、ガタイのしっかりした青年も交じってるのでオージーグループのようだ、みんなビールの飲みながら楽しそうにしている姿をみて、ちょっとうらやましさを感じてしまった。するとラウンジに無精ひげの青年がやってきた、俺の方をみて挨拶をしてきたので、俺もすかさず挨拶をする。この無精ひげ青年もキッチンを使いたいらしく、ラウンジから、ずっとキッチンにいるオージーグループをみている、なんだか顔つきを見てると早く使いたくてイライラしている感じだ。しばらくするとシビレを切らしたのか、その青年はキッチンに行って、オージー達となにやら交渉している。するとオージー達は自分達がキッチンを占領しているのを気づいたのか、そそくさと片付けをしてどこかにいってしまった。
キッチンが開いたので俺も晩飯を作る準備をした。取りあえず今日の晩飯は「Mr.NOODLE」という即席ラーメン。カナダでは「SOUP NOODLE」とか言ってるけど中身は日本の即席ラーメンと同じ。コンロに火をつけ、小さめの鍋でラーメンを作ってる間に、食器を探す。もちろんここはカナダなので日本のようなラーメンドンブリはない。スープ用の皿もあるがこれではラーメンは食べ辛い。結局自分のザックの中から、キャンプの時に使うコッヘルを持ってきてそれを食器代わりに使うことにした。ラーメンだけでは物足りないので、ご飯代わりに食パンも加えることにした。
食後、シャワーを浴びたら何もすることがなく暇になってきてしまった。テレビもあまり面白くないので、旅の日記でも書くことにした。(ちなみに今HPに掲載している「カナダ旅行記」もその時の日記を基にして作っています)。数年前から、旅にでると日記を書くように心がけてきた。最初は、旅でとった写真をアルバムに整理し、そのアルバムのコメント欄にその時撮った写真の心情をコメントしてたが、これが結構旅を思い出すきっかけとなって我ながら好評していた。何のコメントの無い写真より、一言あるだけでも後で見返すと全然印象が違ってくる。それに飽き足らず、いつのまにか旅に出るたびに、日記を書くようになってしまった。様式はあまりこだわらず、朝何をくったとか、昼飯がまずかったとか簡単なもので始めてみた。これだけでも、また更に旅を思い出すのにとても役にたってきた。でも旅で日記を書くのは、一人旅の方が書きやすい。友人同士で旅にでたら、まず書く時間は無いと思った方がいいと思います。しかし俺も飽きっぽいのか、旅の最初はまじめに日記をつけてはいるが、旅の後半になってくるとほとんど書いてないのが現状であります。
ちなみにユースの中は禁煙なので、風呂上りの一服を兼ねて外で日記を書くことにした。幸い外に木で作られたテーブルチェアみたいなものがあったのでそこを利用することにした。外に出ると時間は20:30分を過ぎてるのに、空はまだまだ青空が残って明るい。昼間に比べると大分涼しくなってきた感じである。自販機で買ってきた、Nesteaのレモンティーがとても美味しく感じてしまう。今日一日の出来事を思い出しながらA6サイズの小さな手帳にうだうだと文を書き込み、時折、目の前に見える、山々の景色を楽しみながら、たばこをふかして「ぼーっ」とたそがれる事を何回か繰り返していた。21:30〜22:00位の間だろうか、日記の文章を考えようと再び目の前の山をみてると、さっきまで灰色の山が夕日に染まって赤色に近いオレンジ色になっているではないか。まるで山そのものが熱を帯びて燃えてるような感じである。思わず、傍らにあったデイパックからデジカメを取り出し、写真に収めた。

(ガーン...。ピンボケになってた。生でみたら素晴らしい景色だったのに。写真をみたらショックがでかかった...)
「うぉー、すッげーきれいだ!」
と声に出して叫びたくなるような光景である。今日一日いろんな景色や動物を見てきたが、この夕日に染まる山の光景はそれらを忘れてしまうような、強い衝撃的な光景に値するほどであった。何だか、そんな景色を逃してしまうのがもったいなく感じなので、日記を書くことを辞め、終始その夕日にそまる山をずーっと眺めることにした。やがて30分位すると、その山は段々暗くなり、オレンジの色もなくなってきてしまった。
夕日に染まる山の景色が見えなくなると、あたりは一気に暗くなってきた。ノートの字も段々見えなくなってくるので、急いで日記を書き終えることにした。日記を書き終えると、ほっとした感じになり、ふたたびたそがれる。すると、道路をはさんだ向こう側に、鹿が2匹ほど現れ民家の庭で草を食べてるのがみえた。一応写真にも収めたが、暗くてよく映ってなかったのが残念である。しかし、こうもしょっちゅう鹿が現れてくると、段々飽きてきてめずらしさが感じないようになってきてしまった。
段々、気温が下がり寒くなってきたので、タバコを一本吸い終わったら、部屋に戻ろうと考えてたら、黒人と白人の一組のカップルが現れ、「ここに座ってもいいかしら?」と尋ねてくるので、
「どうぞどうぞ、だけど俺タバコすってるけど、いい?」
と言うと、そのカップルは
「全然OKよ。あなたが先にここにいたんだから」
と答えてくれた。禁煙社会の強い北米大陸では屋内での喫煙はほとんどできない。外で吸うしかないのだ。でも人が近くにいる時も気をつけなければならない。喫煙者にとっては、ますます肩身の狭くなる社会である。カップルは明日の行動予定についてゴチャゴチャとしゃべってる感じであった。タバコの煙が風向きでカップルの方に流れていくのがわかり、とりあえずその場を退散して部屋に向かおうと思ったら、黒人の男性が「君は、国立公園内のどこかトレイルを歩いたか?」
と質問してくるので、
「トレイル?今日来たばかりなので…。タウンサイトトレイルなら歩いたけど」
というと、そのカップルは俺に聞いても無駄だと思ったのか、
「そうか。わかった。結構。」と言いそして、何故か「ドーモ、アリガト。」と日本語でお礼を言ってきた。その時は「ハハハ」と笑いながらその場を後にしたが、何故俺が日本人であることがわかったのか不思議でならなかった。11年前にアメリカに行ったとき、そこで知り合ったドイツ人が、東洋人(ここで言うのは、中国人、韓国人、日本人)の区別が見た目ではわからないと言ってたのを思い出した。後、どこかのテレビの放送でアメリカ人に「あなたの知ってる日本人」というアンケートで「ブルース・リー」や「ジャッキー・チェン」が上位にランクされていた事があって、欧米人から見て、東洋人はどれも一緒という認識をもっていたからであった。まあ、その逆も一緒であるが…。そんな事を思いながら部屋に戻ったが、部屋は真っ暗で、オージーグループ達はもう既に寝てしまってるので、俺は静かに上のベッドに上がり、床に着くことにした。しかし、まだ風邪が治ってないので、夜中に咳き込んで何度か目を覚ましてしまった。枕もとにミネラルウォーターと喉飴をおいて、咳き込む毎に水を少し飲んで咳を静めることとした。ようやく咳が落ち着くと爆睡体制に入っていった。
(つづく…)
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