第3話2002年カナダ旅行記(機内編)

*NW008便の機内*
  機内に入り、自分の席の番号チケットを確かめる。チケットには「XXC」と書かれていたので「よっしゃ、通路側だ」窓側ではなく安心した。何故かと言うと、窓側はトイレとかで席を立つ際、いちいち「すいません」といって立たなくてはならないからだ。そうすると、隣とその隣に座っている人たちはわざわざ、その人の為に一旦席を立たなくてはならない状況になってしまうので非常に気を遣ってしまうのだ。

 ようやく自分の座席の所に到着、機内の後ろから2番目の座席だ。既に隣の席には外人の女性がいて座席の上にあるラゲージスペ-スに荷物を収めてる最中であった。彼女は私の方を見るとニコニコしながら、「ハロー」と挨拶してくる、なかなかフレンドリーな方だ。お互いが日本人同士だったらこうはならないだろう。私も、「ハイ」といって席に座ろうとすると、外人さんが「私これからちょっとトイレに行くので、しばらくしたらもどってくるから」というので、「OK」と返事をした。

 今回NORTH WEST航空は初めてである。あまり、サービス上や座席の件でいい噂を聞いてはいなかったが、シートの幅はまあまあ、リクライニングの角度はいまいち、前後のスペースは狭いといった感じであろうか。今まで国際線は、JAL,全日空、デルタ、ユナイテッドと乗ってきたが、座席に関しては全日空に軍配があがる。米国系だとデルタが良かった。ノースはその次くらいかな?

 全員の搭乗が終わると座席は既に満席であった。エアチケットが取りにくいというのも頷けてしまう。ちなみに、昨年の9/11のテロの影響で米国線のフライトの便数が半分くらいに減らされてしまったので、この時期でもチケットが取りにくくなってしまったと誰かが言ってた。

 予定時刻より20分ほど遅れて、飛行機がゆっくりと動き出す。
「さあ、出発だ。」この飛行機が動き出す瞬間も、心がうきうきワクワクしてくる。その間機内では、非常時に備えての、酸素マスク、救命胴衣、脱出の仕方の説明を行っていた。

 ゆっくり動いていた飛行機は滑走路につくといったん停まり、やがて一気に加速を増してふわっと離陸をしていった。

 離陸後、水平飛行になると、スチュワーデスが慌しく動き回り、飲み物とスナックを配りまくる。取りあえずコーラを頼み一気に飲み干してしまった。

 やがて、夕食の時間となる。スチュワーデスは
「Chicken or Beef?」といいながらトレーにどちらかのメインデッシュを配り始める、
飲み物は、さっさと酔っ払って寝たいので赤ワインを頼むことにした。味はそんなに期待してなかったので、中の下といったかんじだろうか?コンビニ弁当の方が美味い気がするが。

 ワインも飲み干しほろ酔い気分になるがまだ睡魔は襲ってこない。その後映画の時間に突入する。今回はショーン・ペン主演の「I AM SAM」が上映されるではないか。日本では映画館で上映中の映画である。
「おー、見たいと思ってた映画がやるぞラッキー」と思って、ワクワクしてたが、実際上映が開始されると、落ち着いて見れないのである。飛行機のなかなので仕方がないのだが、食事後はみんなトイレに行く人が多くなるので、通路は人でごった返しで見えないのである。しかも、私の席から4列位前に座ってる外人はとても背が高く、しかも狭い座席に座ってるのが苦痛なのか、ずっと立っているのである。しかも私の席からだとその外人が邪魔でスクーリンが全くみえない。
「邪魔くせー外人め、どけよ」といいたくなるが、席にすわってると本当につらそうな感じだったのでかわいそうだから許してやった。どうもあまりにも背が高いので足の膝が前の座席に当たるらしく無理な姿勢で据わっているため腰を痛めてしまってるようだ。

 映画を諦めると何もすることがなくてとても暇になる。暇というより苦痛さえ感じてくるのだ。咳がひどくなってきたので、薬を飲むことにした。薬を飲めば眠くなるだろうと淡い期待もしたが、それも効果なし。考えてみれば飛行機に乗ってまだ3時間くらい、日本ではまだ18:30だ。こんな時間に寝ようとするのも無理がある。

 映画が終了すると、機内は睡眠モード突入状態になる。電気も消され、周りは途端に静かになる。持ってきた文庫本はフレームザックの中に入れっぱなしだったので、本も読めない。MDウォークマンはバッテリーを充電するのを忘れたので聞くことができず。仕方がないので、日記を書くことに。1時間もたたないうちに書き終わってしまった。
「やることがない。暇だ。寝れない。」こんな状態なので、いったん席をはずし、後部の出口近辺でストレッチを始めた。ずーっと同じ姿勢でいるのも辛いので、少しは楽になる。出口のすぐ横にスチュワーデス用の席があったのでそこで座りながら、窓から見える真っ暗な外をひたすら眺めてた。壁に着いてる椅子なのでリクライニングはできないが、足を思いっきり伸ばせてとても快適なので、すごく気に入ってしまった。
「うん、ここはいい。しばらくここで座っていよう」と思うと、飛行機が乱気流の中に突入したのか、やたらガタガタ揺れてくる。すると途端に機内に「FASTEN SEATBELT」のサインが点滅し始める。スチュワーデス達は、席をはずしてる乗客に、
「安全の為、席にお戻りください」と注意をはじめ、しぶしぶ俺も席に戻ることにした。

 離陸してから、5時間くらい経つとデザートタイムの時間になる。本日のメニューはオレンジシャーベット。鬼のような退屈な時間に浸ってると食べ物というのはとてもありがたく感じる。サンマの蒲焼の缶詰みたいな形をした容器とスプーン、ペーパーナプキンが乗客に配られ、
「どれどれ、食うかな」と意気楊々にシャーベットにスプーンを入れようとすると、「ガチッ」と音がなるだけで、スプーンがささらない。
「なんじゃこりゃ?凍らせ過ぎだよ」とつぶやいた。周りの人もスプーンがささらず、
悪戦苦闘している。俺がムキになって、スプーンをガンガンさしてると、隣の外人の姉ちゃんがそんな姿をみてクスクス笑ってるので、
「固いシャーベットだ」と話し掛けると、
「そうね。しばらく置いて解けるのを待つしかないわ」というので、俺もそうすることにした。5分間程放って置くとようやく、スプーンがささるようになり食べれるようになったので、今までの鬱憤を晴らすかの如く、バクバクと一気に平らげてしまった。

 食べ終わると、また何もすることがないので、再び後ろのスチュワーデスの席に移ってくつろぎ、飛行機が揺れ始めると自分の席に戻るの繰り返しであった。しかし、この飛行機やたらとよく揺れる。

 空もだいぶ白んでくる頃になると、突然スクリーンにパッと画像が映し出される。太平洋上を中心にした地図だ。アメリカ各都市の天気や気温が映し出されている。そして飛行機の現在の飛行状況もだ。アラスカを過ぎ、カナダの上空を飛んでるとの事。「あともう少しだ」ちょっとだけ、退屈から逃れられる希望が湧いてきた。

 やがて朝食の時間になる。何故か「やきそば」を頼んでしまった。これもあまり美味くない。食後のコーヒーを飲み到着まで残り1時間となり、米国の出入国カードと税関申請書カードの記入をしてなかったので、慌てて記入を始めた。途中で記入の仕方がわからなくなくなってしまった。アメリカのガイドブックをもっていれば、そこに記入例が書かれているので問題がないが、今回はカナダのガイドブックしか持ってないので、困り果ててしまった。しまいには、
「い〜や適当で」とサラサラと書き込んでしまった。しばらくして、座席の前のポケットにノースウエストのパンフ見たいのがあったので、ぱらっとめくってみると、それらのカードの記入例があるではないか。再度適当に書いたカードを照らし合わせてみると、日本語で書かなければならないところをローマ字で書いてしまったりと結構間違ってる部分が出てきた。ボールペンで書いてしまったから消すことが出来ないので、間違った所をぐしゃぐしゃと塗りつぶし、上の部分に訂正したら、見栄えがなんとも汚い格好になってしまった。こういうものは役所に出すものという認識でいたけど。
「まあ、いいや。注意されたらもう一度書き直そう」とそのまま提出することにした。

 やがて俺を乗せたNW008便は段々と高度を落とし、窓からはシアトルの住宅街から街並みまでみえるようになってきた。ぐっと機体は旋回を行ってから、シアトル・タコマ空港へ着陸をした。機内での約9時間の空の旅は俺にとって、拷問に近い苦痛な空の旅であった。飛行機の中は寝るに限ると思う。そのためには爆睡できるような、術を身に付けなければならないと感じた。
「やっと着いた〜」と開放感が押し寄せて来ながらも、寝不足と風邪で既にボロボロになった肉体にムチを撃ちつつ、よろよろと飛行機を降りていった。

つづく…